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  3. 因数定理\(P_{(x)}=0\)の基本的な使い方と\(x\)の値を素早く見つける方法
因数定理

問題集の解説を読んでいて、突然\(P_{(1)}=0\)とか\(P_{(2)}=0\)などが書いてあり、何のことかわからなくなった人

しかも、さも当たり前のように\(P_{(1)}=0\)や\(P_{(2)}=0\)と書かれているけれど、\(1 \)や\(2\)はどうやって決めているのかわからない人

数学の問題集の解説は不親切、解説の解説が欲しい、だから数学は嫌い…
と思うかもしれませんが、数学の問題集、とくに学校で使用している問題集は、授業で使用することを前提に作られているので仕方ないと思いましょう

とりあえず、\(P_{(1)}=0\)がよくわからない人は以下を読んでください

因数定理とはどんな定理?

ある整式を1次式\(x-α\)で割り算したら余りが\(0\)、つまり、きれいに割り切れるとき、この式は\(x-α\)を「因数にもつ」といいます

例えば\((x^3-6x^2+11x-6)÷(x-1)\)は商が\(x^2-5x+6\)で余りが\(0\)
このとき、整式\(x^3-6x^2+11x-6\)は\(x-1\)を因数にもちます

この「整式÷因数=商、ただし余り0」を数学記号を使って表すと「整式\(P_{(x)}\)は1次式\(x-α\)を因数に持つ」となり
\(x-α\)が\(P_{(x)}\)の因数\(\Leftrightarrow P_{(α)}=0\)
と書きます

この\(P_{(α)}=0\)が因数定理です

ただし、\(α\)の符号のプラスマイナスが逆になることに注意してくださいね

因数定理は高次方程式を因数分解する手段のひとつ

この定理は基本的に3次方程式や4次方程式などの高次方程式を解くとき、または3次式の因数分解を解くときに使います

高次方程式は、まず初めにこの定理を使って解のひとつを求めます
この解が因数のひとつになります

そして求めた因数で方程式を因数分解し、残りの解を求めていく…という手順で解きます
ちなみに因数分解は因数で割り算するだけです

しかし、定理を使うといっても、因数定理には三平方の定理や円周角の定理のような決まった法則がありません
使い方は、ただひたすら数字を代入して計算するという力技です

因数定理の表し方

\(x^3-3x^2-18x+40=0\)に\(x=2\)を代入すると
\(2^3-3×2^2-18×2+40\)となり、計算すると\(0\)になります
つまり3次方程式\(x^3-3x^2-18x+40=0\)が成り立ちます

よって\(x=2\)はこの方程式の解なので、整式\(x^3-3x^2-18x+40\)は\(x-2\)を因数にもちます

これを因数定理で表すと
\(P_{(2)}=0\)となります

つまり、\(P_{(2)}=0\)と書いてあればその問題の整式は\(x-2\)という因数を持ち\(x-2\)で割り切れる、ということになります

また、\(P_{(-1)}=0\)と書いてあればその問題の整式は\(x+1\)という因数を持ち\(x+1\)で割り切れる、ということです

\(P_{(α)}=0\)の\(α\)の値は約数を使って見つける

\(P_{(α)}=0\)の意味はわかったけれど、\(α\)の値はどうやって求めるの?という疑問を持っている人も多いはず

実は\(α\)の値が一発で求められる公式や決まりはありません
とにかく計算すると\(0\)になる可能性のある数字を代入して見つけます

ただし、早く見つけるコツはあります

早く見つけるコツは、「定数項の正の約数と負の約数のうち、\(0\)に近い数字から順に計算する」ことです

理由は簡単、1次式で割ると余りは定数のみになり、さらにこの定数も割りきれると余りが\(0\)となるからです

成績アップのコツ、友達に説明できるくらいまで知識を深めよう

因数定理を使って3次方程式を解いてみよう

では因数定理を使って3次方程式を解いてみましょう

【問題】
3次方程式\(x^3-2x^2-9=0\)の解を求めよ

\(P_{(x)}=x^3-2x^2-9\)とおきます

そして、代入して計算すると\(0\)になる\(x\)の値を探します

\(x\)の値が早く見つかる探し方は、「定数項\(-9\)の約数\(±1,±3,±9\)のうち\(0\)に近い数字から確認していく」です

まず\(+1,-1\)から順に代入していきますが、残念ながら答えが\(0\)になりません

続いて\(3\)を代入してみましょう

\(P_{(3)}=3^3-2×3^2-9=0\)
代入して計算すると答えが\(0\)となったので、\(P_{(x)}\)は\(x-3\)を因数にもちます

よって\(P_{(x)}=(x-3)(x^2+x+3)\)

後半の\((x^2+x+3)\)は\((x^3-2x^2-9)÷(x-3)\)を計算して求めましょう
割り算の方法は、筆算でも組立除法でもどちらでもかまいません
ただ、1次式で割るときは組立除法の方が便利でしょう

ここまでで、\((x-3)(x^2+x+3)=0\)となりました
この方程式が成り立つ条件は\((x-3)=0\)または\((x^2+x+3)=0\)のときです

\((x-3)=0\)が成り立つのは\(x=3\)のとき
そして\((x^2+x+3)=0\)が成り立つのは解の公式を使って
\(x=\frac{-1±\sqrt{11}i}{2}\)

よってこの問題の解は
\(x=3,x=\frac{-1±\sqrt{11}i}{2}\)

計算の流れをまとめて書いておきます
【問題】
3次方程式\(x^3-2x^2-9=0\)の解を求めよ

\(P_{(x)}=x^3-2x^2-9\)とおく
定数項\(-9\)の約数\(±1,±3,±9\)のうち\(0\)に近い数字から順に代入し、答えが\(0\)になるものを探す
\(P_{(3)}=3^3-2×3^2-9=0\)
よって\(P_{(x)}\)は\(x-3\)を因数にもつので
\(P_{(x)}=(x-3)(x^2+x+3)\)
\(P_(x)=0\)より
\((x-3)(x^2+x+3)=0\)
ゆえに\((x-3)=0\)または\((x^2+x+3)=0\)
したがって\(x=3,x=\frac{-1±\sqrt{11}i}{2}\)

実際は約数を気にしなくても解き終える時間はたいして変わらない

\(α\)を早く見つけるコツは「定数項の正の約数と負の約数のうち、\(0\)に近い数字から順に計算する」ことと言いましたが、実際には約数を気にせず\(±1\)から順に\(±2,±3\)と代入してもかかる時間はたいして変わりません

理由は、高校数学レベルの問題ならば、たいてい\(±1〜±3\)くらいまでの数字で答えが求められるように作られているからです

定数項が偶数ならば\(±1\)の次は\(±2\)、奇数ならば\(±1\)の次は\(±3\)以降の数字くらいの判断を身につければ十分スピードアップとなるでしょう

成績アップのコツ、ノートには問題文も書こう