「比較係数法」か「数値代入法」か

恒等式の定数の値を求める方法は2つあります
ひとつは、両辺の同じ次数の項の係数を比較して求める方法(比較係数法)、もうひとつは、適当な数値を代入して求める方法(数値代入法)です
では、「比較係数法」で解くのか「数値代入法」で解くのか、の判断はどうやってするのでしょうか?
実は、恒等式の定数を求める問題は、一部の例外を除き、原則としてどちらの方法を使っても必ず答えが求められます
実際、問題集の解答解説には、「別解」として「比較係数法」と「数値代入法」の両方を記載しているものも存在します
したがって、どちらを使うか見分ける必要はありません
どちらの方法を使うかは、自分の好みで決めてかまいません
「比較係数法」を使うほうが少しだけお勧め
「比較係数法」と「数値代入法」、どちらを使っても必ず答えは求められますが、「比較係数法」を使う解き方の方が、ほんの少しだけお勧めです
理由は以下の2つです
比較係数法がおすすめの理由
その1
比較係数法がおすすめの理由・その1
数値代入法では恒等式であることを確認する式を書かなければならないが、比較係数法ではその必要がない
数値代入法では、定数の値を求めたあとに、その求めた数値が全ての文字で成り立つこと、つまり、恒等式であることを確認しなければなりません
しかし、比較係数法で解いた場合は恒等式であることの確認をする必要がありません
確認する式を書かなくて良い分、ほんの少しだけ比較係数法の方がお勧めとなります
たとえば、以下の例題を数値代入法で解いてみます
【例題】次の等式が\(x\)についての恒等式となるように定数\(a\)、\(b\)、\(c\)、\(d\)の値を定めよ\begin{align}a(x+1)^3+b(x+1)^2+c(x+1)+d=3x^3−2x−1\end{align}
【解答】式に\(x=−2、−1、0、1\)を代入すると\begin{align}−a+b−c+d&=−21\\d&=−2\\a+b+c+d&=−1\\8a+4b+2c+d&=0\\これを解いて、a&=3、b=−9、c=7、d=−2\end{align}※\(x\)に代入する数字は、自由に決めることができます
ここまでで\(a\)、\(b\)、\(c\)、\(d\)の値はも求められましたが、上記で述べた通り、数値代入法で解いた場合はこの後に恒等式であることを確認する必要があります
よって、この解答には続きがあります
【解答・続き】\begin{align}&これを解いて、a=3、b=−9、c=7、d=−2\\&逆に、このとき\\左辺&=3(x+1)^3−9(x+1)^2+7(x+1)−2\\&=3x^3+9x^2+9x+3−9x^2−18x−9+7x+7−2\\&=3x^3−2x−1=右辺\\&となり、この問題はxについての恒等式である\\&よってa=3、b=−9、c=7、d=−2\end{align}
このように、恒等式であることを確認する式を書かなければ正解となりません
確認する式を書くのが面倒だと考える人は比較係数法を使いましょう

比較係数法がおすすめの理由
その2
比較係数法がおすすめの理由・その2
文字が2つ以上ある恒等式の場合、数値代入法では代入する数値が増えて面倒に感じることもある
文字が2つ以上の恒等式の場合は、代入する値も文字の分だけ必要になります
たとえば、以下の例題を数値代入法で解いてみます
【例題】次の等式が\(x、y\)についての恒等式となるように定数\(a\)、\(b\)、\(c\)の値を定めよ\begin{align}x^2+xy−12y^2−3x+23y+a=(x−3y+b)(x+4y+c)\end{align}
【解答】式に\((x,y)=(0,0)、(1,0)、(0,1)\)を代入する\begin{align}(x,y)&=(0,0)を代入するとa=bc…①\\(x,y)&=(1,0)を代入すると−2+a=(b+1)(c+1)…②\\(x,y)&=(0,1)を代入すると11+a=(b−3)(c+4)…③\\&②,③に①を代にして整理するとb+c=−3、4b−3c=23\\&これを解いてa=−10,b=2,c=−5\\&逆に、ことのき\\左辺&=x^2+xy−12y^2−3x+23y−10\\右辺&=(x−3y+2)(x+4y−5)\\&=x^2+xy−12y^2−3x+23y−10\\&ゆえにこの問題はx、yについての恒等式である\\&したがってa=−10,b=2,c=−5\end{align}
何十、何百という数字をたくさん代入するわけてはないので、たいしたことないかもしれません
しかし、多くの数字を代入するのが面倒だと考える人は比較係数法を使いましょう
